てゐる』ヴォルテール
送り狼として
ブルジョア詩人よ
君たちは何時も家柄を吹喋《ママ》してゐる
子々孫々からの
詩の技術の継承者として誇つてゐる、
だがプロレタリア詩人はちがふ、
我々は詩人の後つぎではない
すべてが新しい出発者、
我々は単なる民衆の息子としての詩人だ、
我々には君達のやうに
他人に詩人を広告する権利や
気儘に放蕩や放埓を
市民の中でふりまはす
横柄さを誰からも許されてゐない、
君らはチラリと見せて
スッと通つてゆく
良い門鑑を持つてゐる
君はそこへ人間の節操や、
奉仕やを売りに行つたらよい
おかしなことには
君のパトロンは
君の売り物に
カビが生えてゐるといつて品物を突き返す
そこで君等は声の合唱をもつて泣く
――詩の社会的地位はない、
――詩の商品的価値が落ちた、と
これらの不平不満を
おゝ、御用商人、
君たちは将来何世紀にわたつて
繰り返へさうとするのか、
君たちは既にあらゆるものに
君たちのパトロンにさへ
多年の御愛顧を失つた
あわて給ふな、詩人たちよ、
詩壇復興は何時の場合にも
プロレタリア詩人の側から――、
あわてるよりも一応は利巧で
結局は愚劣な君の製品の
裏表をかへしてよつく吟味し給へ、
かなしみ給ふな詩人たちよ、
当分は女の子の
崇拝の的ともなれるだらうから、
巨大な建物を威張つて通るさ、
老いては駑馬にすぎざる詩人も
尚且つ詩人といふ
門鑑を手放さない、
我々プロレタリア詩人は
君たち詩人を
断崖まで送つてゆかう、
我々は永久に君の背後を去らない、
親しい友情をもつてゐる、
それは送り狼としての友情を――。
柔らかい肉を
友よ、料理人よ、
近頃君の心の中の、暴君が、
どんな風につぶやいてゐるのか、
私はそれがききたいね、
それとも君は、君の心の中には、
なんにもぱちぱちハネるものが、
ないとでもいふのか、
君の心臓がさ、
君のフライパンがさ、
こんなに激しい油と火の中に住んでゐるのにさ、
君は経営者か、
そうぢやない使用人ぢやないか、
主人のものは、どんどん浪費すべきだよ、
炭をけちけちしてゐては、
いゝ料理ができつこないぢやないか、
私のコックは、とつくに腹を立てゝしまつたよ、
現実とは――、なんと油がふんだんにあり、
炭がふんだんにあるところだらうね、
だから我々料理人は、
今が大いに腕を示すべきときだよ、
何時
前へ
次へ
全24ページ中12ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング