しい常識だ。
母を殺したのは
稼ぎのない父ではなかつた。
おれ達貧乏人は、斯うして
ろくに医者にもかけられずに
死を早めてゐるんだ。
母を殺したのは父ではない。
ブルジョアの仕業だ。
俺は率直にかう敵を憎めた。
母とは一体どんな形のものか
俺はそいつを見たことがないんだ。
一九〇〇年三月
レーニンは追放され
彼はイヱニセイ河に沿つて
三〇〇ウェ[#「ェ」は小さい「ヱ」]ルストの路を
夜も昼も橇をブッ飛ばした。
レーニンは宿場々々で
母やクルプスカヤをどんなにいたはつたか。
母の『手温め』の中に
たがひに手を差入れて温め合つた。
今年も、三Lデーがやつてきた、
毎年新らしい情勢の中に
レーニンはピチ/\と
俺達の実践の上に生きて現はれてくる。
同志諸君
俺たちのレーニン
愛情の火のかたまり
彼が俺たちの解放運動の為めに
厳寒の雪野原を
まつしぐらに橇を飛ばして
ロシアに帰つた光景を
まざ/゛\と想ひうかべよう。
豊多摩刑務所で
同志佐野博の母親が
接見所で息子と話が終つたとき、
同志佐野の手をギューッと握つた。
その息子の手は氷のやうに冷めたかつた。
『お前、なんてまあ冷めたいんだ
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