る――人間の意志に、
人間から与へられた絶対への屈服者だ、
そんな悲惨なことはない、
思ひ立つたらすぐ行動に移せ
あゝ、だが思ひ立ちさへもしない、
お前は人間とたかかはなければならない、
お前にも自由があるだらう、
それは然し小さな範囲のものだ、
お前の自由は――
人間の命令の中で飼はれてゐる、
我々は野や村をとぶ
かならずしも絶対自由ではない、
怖ろしい鳥や、嵐や、激しい羽もやつてくる、
ただ私はこれらの敵と
たたかひ勝たうとする、
これらのものとの勝負は
すべての実力を発揮して後にきまる、
君は飛び立たうともしない、
君の自由慾求の何と小さなことよ、
青空の下にあつて青空を知らずだ、
ヤマガラの宇宙観は
必ずしも人間の宇宙観には劣つてはゐない筈だ、
町のヤマガラよ
お前の意志は鳥籠の中にだけある、
スポリと上から掩いかぶさつたものは
人間の意志だ、
だからお前は人間を遁れることができない。
真に自由を愛するものは
自由をうばつてゐるものを
圧服するやうな
敵よりも幾層倍も大きな宇宙観をもて、
新しい世界の新しい秩序や調和や
すべて自由な
新しい生活がそこから始まるだらう。


失恋
前へ 次へ
全43ページ中5ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング