刹那に
お前は頭の上を仰いで見よ、
空はお前に行為を要求してゐる、
お前は飛びたつためには
羽をうごかさなければならない、
よしお前の羽が弱からうとも
自由を欲する努力がなされねばならぬ、
人間がお前に与へた秩序や習慣は
すべて人間に都合がよいやうに、
つくりあげられた秩序であり習慣さ、
すべて腹黒いものは
己れを肥やすために他人に
法文や秩序をつくつて与へる、
犯さうとするものは脅やかされる、
二度三度犯さうとする、
四度五度脅やかされる
するとお前のヤマガラは断念する
飛び立たうとしない
羽を忘れたのだ、
それからお前にとつて
俗に宿命と名づけれらるものが始まり
習慣と名づけられるものが続く、
すると人間はもう安心なのだ、
咬へギセルで
――さあ/\ヤマガラの芸当でござい。
と云ひながらお前の鳥籠の扉をひらく
その瞬間だ
お前が空へ飛ばねばならないのは
だがお前は飛ばない
チュン/\と鳴いてオミクジをとりにゆく、
お前の頭は何といふ悲惨な頭だ、
町のヤマガラよ
ミミズでさへも我々が捕へると
身をはげしくくねらす
嘴で三ツに切ると
三方に逃げようと努力するではないか、
お前は負けてゐ
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