はそのするどい尖端にとまつて鳴く、
私はするどい叫びに
ふさはしい世界を求めて
新しい野と、新しい林へゆく、
なんといふ私の小鳥と
周囲の調和の美しさよ。
自由よ、お前の正体は何か
自由と言ひ、自由の束縛と言ひ
町のヤマガラよ、
お前はその正体を知つてゐるか、
お前はそれを具体的に語ることができるか、
をそらく、それはお前には出来ないだらう、
ただ自由に囀り、自由に飛び廻るものが、
これらのすべてを知り、
これらのすべてを語るだらう。
町のヤマガラ、お前の芸当よ、
お前は人間の手に捕へられた、
そして怖るべき訓練が与へられた、
鳥籠の蓋をひらくと
お前はチュンチュンと鳴きながら
ここを飛びだして
小さな神殿の扉を嘴であける、
中からオミクジを咬へて
これを人間の掌の上に渡し
そしてお前は又もとの鳥籠の中へ帰つてしまふ。
お前の生活の全部がそれだ、
お前は自分の小さな体の
百層倍も大きな人間を
お前の可憐な芸当で養つてゐる、
お前、自由を忘れた町のヤマガラよ、
自由を忘れた人間のそのやうに、
与へられた習慣を
絶対的に考へてしまつた哀れなものよ、
町のヤマガラよ、
お前は鳥籠を離れた
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