どんなに燃えてゐるか
敵に対する憤りの激しさを
火を噴くうなりのはげしさを
はつきりときいてきてくれ。
才能を与へ給へ
私は何者かの代理となつて
抗議しなければならない
自分のためにか、
あるひは他人のためにか、
あゝ、それは今しやべつてゐるものではなく
いまダマッてゐるものに
かはつて抗議の先頭に立たう、
あゝ、それは今走り廻つてゐるものでなく
いま足止めを喰らつてゐるものに
かはつて抗議をしてやらう、
高い――、
それは憎悪の大てつぺんの塔だ、
低い――、
それは悲哀の奈落の底の底だ
この高いところから
低いところまで
往復する私の肉体の消耗よ、
叫び、駈け廻つてゐるものは救はれてゐる、
だが、だまつて涙を
流してゐる弱い者はどうか
これらのもの達にかはつて
舌をうごかさう、
私の肉体を、
ぞんざいに使ひまくらう、
神よ、私にお前や
敵を罵る
悪口雑言の才能を与へよ。
散兵線
カーネーションの花に接吻する
呆然と河の流れに眼を凝らす、
夜つぴて思索する
女に逢ひに出かけてゆく、
読書し、詩を書く、
お巡りさんに頬ぺたをはり倒される
何故このやうに
さまざまの事件の
渦
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