の、
都会の顔貌の一隅に降り、
またたちまち舞ひ立ち、おどろかしたもの、
それは何か、私の額を蹴つたものは何か、
若しやそれが私や人々が等しく感じてゐる
都会の饑餓といふものの正体ではないだらうか。
樺太節
ここは沿海州の波続き、ドン、ドン、ドン、
岩のしづくはアレ紫しづく、
ふつと見をろす、藍の淵、
誰れに飲ましよと、薬草とり、
ドン、この岩のぼり。
ここは沿海州の波続き、ドン、ドン、ドン、
海にうかんだアレ愛嬌もの、
ならぶアザラシ、海坊主、
恋にもつれて、水くぐり、
ドン、ヤレ、五連銃。
ここは沿海州の波続き、ドン、ドン、ドン、
流れ流れて、ホイこの海稼ぎ、
のぞき眼鏡で、底さぐり、
腕におぼえの車櫂、
ドン、この昆布取り。
ここは沿海州の波続き、ドン、ドン、ドン、
野原いちめん、花烟、
女ご忘れて暮らしはしたが、
丘の黒百合、悩ましや、
ドン、ソレ、春の風。
(註)ドン、ドン、ドン、は囃言葉、又は太鼓をもつて波の音を利かす。
バラバン節
破れ銅鑼を、敲かうよ。
バラバンのバン
壁の施條銃、何撃つ銃。
私しや悪党、血を見にや済まぬ。
山の険
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