さに張りつけられ。
夜の暗がりは真先に私を射て
激しい青ざめた獣の
枯れた樹間の寝床は
淋しい霜に閉ぢこめられる
窓をまもる男
その高窓は何事のために
まるみを帯た声音で終日鳴るのか
その窓が鳴れば
その窓の傍に立つた
背の高い男も晴ればれとしてくる
男は薄い頬とたくましい咽喉仏をもつた
守護神のやうにもきらめいて
緑色に燃える高窓をまもり暮らす。
掌に生へた草
せんさいな風に生きて
ふしぎに頬を打たれることもなく
私の占める座席は
針程のわづかな場所であるのか。
だがなんといふ青草の
精気はつらつとしてゐることか
私は草の食事をしてゐるのを見たことがないのに
私の住ま居の一隅に
いつのまにか歩いてきてゐるのだ
胃の腑のないものが
どうしてあんなに健康であらう。
私はいま掌の中に
草の生へるのを感じて慄然となる
まつたく彼は私の頭の上にでも、
肩の上にでも生へかねないのだ。
初雪の朝に
羞恥な女が谷間に下りたつたやうに
一夜にして私の眼界を洗清めた
ものしづかな白い世界よ
私はこの冷えた冬の期[#「期」に「ママ」の注記]節を
雷鳴のやんだあとの
深淵の傍らにゐ
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