信柱の行列が手ぢかな所に立つてゐるのから順々に雪の地上にばたんばたんと恐ろしい音響を立てて横に倒れて了ふし、それは静かなうちに賑やかな街の風景であつた、私はまづこのとろんこの眼をして寝静まつた大通の中からなにかしら動物の相棒を探してやらうといふ考へから道路の真中に震へた感情の両足の安定をたもつために少からず脳神経をなやましぐつと反り身になつて辺りをぎろぎろと嗅ぎ歩いたが私の瞳孔は散大して了つて愛する友人の一人も発見することが出来なかつたのです、地球壊滅の日に生存した人間のやうに生物をひた恋しく私はさびしい気持であてもなく探しあるいたがひつそりとした深夜の空が明るいばかり月は北国の月の青さで丸さで照り返してもみんな青い白さである街はあんえつの湯たんぽの上気でもうろうとねむつて居るのです、ちやうど其時ですつひ足もとの大地の上にひろびろと青い冬の明るい雪にいつぴきの黒くくまどられた犬が足のみぢかい犬がアンリー、ルーソーの犬がひよつこりと突立つてゐたのです、私はこの善良なる友人を得た喜びにじつと上から犬を見下ろしてゐたのです、すると遠くから「おうおうおうおう」と犬の遠吠えが聞えると私の友人の犬
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