てしまつた。
或る日、彼女が我々無産階級に到底ありうべからざる陰謀を企てゝゐたのを、偶然の機会から発見した。
彼女は、三日もつゞけさまに、朝の味噌汁にキャベツを使つて俺を苦しめたのである。
それは何かの復讐であつたかも知れない。
彼女は百姓の育ちであつたので青菜類をこのんだし、俺は海浜に育つたので魚類が好きであつた。
魚であれば多少腐つてゐてもよろこんだ。
それに彼女は、片意地な自我を毎朝三日もつゞけて、その椀の中にまざまざと青いものを漂はして俺を脅迫したのが、たいへん癪にさはつた。
俺は激しく怒つて、男性的な一撃を彼女に喰らはした。
膳の上には革命がひらかれた。茶椀を投げつけた。茶椀は半円を描いて室中を走り廻つた。
女はかうした場合何時も無抵抗主義をとつた、寒い猫のやうに、自分の膝の中に頭を突込んで丸くなつた。
その惨めなさまが、尚更俺の憤怒の火に油をそゝいだ。
(二)
なに事についても彼女は大袈裟であつた彼女が鼻水を垂らして泣いてゐるのだけでも、もう沢山であるのに、それに涎まで加へてせいゝつぱい色気のない顔をして賑やかに泣きだした。
――殴るのも
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