殴る
小熊秀雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)他人《ひと》さまの
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)窺ひ[#「窺ひ」は底本では「窮ひ」]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ひら/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
(一)
俺はつくづくと考へる。世の中の奴らは、もちろん嘘で固まつてゐるといふ事実だ。
情なくなるから、あんまり他人《ひと》さまのことはいふまい。手近なところで、俺の信じてゐる彼女の態度はどうだ、だんだん世間なみに嘘をおぼえこみ、なんにもないところから、鶏を飛び出させたりする手品師のやうな真似を始めだした。
――真個《ほんと》うにお可笑な方ね、お金が無くなれば、乞食のやうな惨めな気もちになつてしまふのね。
彼女の観察は当つてゐた、しかし俺は決して不自然なことゝは思つてゐない。
俺は社会主義運動を始めるのだとその抱負を語つても、彼女はてんで対手にしてくれない。
――貴方なんて、生まれつきのブルジョア思想よ、どうしてそんな荒つぽい運動が出来るもの
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