てある。ピールはこれを読んで、すっかり感心し[#「すっかり感心し」に傍点]、こんな人には無論年金を贈らねばならぬ、早くこれが手に入らないで残念な事をしたと言った。
ところが、サー・ジェームス・サウスは再びこの伝記をカロリン・フォックスに送って、この婦人からホーランド男の手を経て、メルボルン男に差し出した。
初めにファラデーはサウスに、やめてくれと断わりを言ったが、ファラデーの舅のバーナードが宥《なだ》めたので、ファラデーは断わるのだけはやめた。
この年の暮近くになって、総理大臣メルボルン男からファラデーに面会したいというて来た。ファラデーは出かけて行って、まずメルボルン男の秘書官のヤングと話をし、それからメルボルン男に会うた。ところがメルボルン男はファラデーの人となりを全く知らなかったので、いきなり「科学者や文学者に年金をやるということはもともとは不賛成なのだ。これらの人達はいかさま師じゃ[#「いかさま師じゃ」に傍点]」と手酷しくやっつけた。これを聞くやファラデーはむっと怒り[#「むっと怒り」に傍点]、挨拶もそこそこに帰ってしまった。もしやメルボルン男が年金をよこす運びにしてしま
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