ったか。否、ファラデーは前から内職に化学分析をしておったので、これがよい収入になっていた。一八三〇年には、この方の収入が一千ポンド[#「一千ポンド」に傍点]もあった。そしてこの年に、電磁気感応の大発見をしたのである。
 それでファラデーは、自然界の力は時として電力となり、時として磁力となり、相互の間に関係がある。進んでこの問題を解いて大発見[#「大発見」に傍点]をしようか。それともまた、自分の全力をあげて、富をつくるに集中し、百万長者[#「百万長者」に傍点]となりすまそうか。富豪か[#「富豪か」に傍点]、大発見か[#「大発見か」に傍点]。両方という訳には行かぬ。いずれか一方に進まねばならぬ。これにファラデーは心を悩ました。
 結局、ファラデーの撰んだ途は、人類のために幸福であった。グラッドストーンの言ったように、「自然はその秘密を段々とファラデーにひらいて見せ、大発見をさせた[#「大発見をさせた」に傍点]。しかしファラデーは貧しくて死んだ[#「貧しくて死んだ」に傍点]。」

     三一 千五百万円の富豪

 チンダルが書いた本には、このときの事情がくわしく出ている。収入の計算書[#
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