。これは減ずることは出来ない。またファラデーの熱心や能力に対して気の毒ではあるが、王立協会のただ今の財政では、これを増す余地は絶対にない」ということが書いてある。
 しかしその翌年に、下院議員のジョン・フーラーという人が金を寄附[#「金を寄附」に傍点]してくれて、新たに化学の教授を置くこととなり、ファラデーを終身官として、これを兼任させた。その年俸百ポンドで、今までの俸給の上にこれだけ増俸した事になった。実験費もいくぶん楽になった。その後に俸給もまた少し増した。
 ファラデーが年を取りて、研究や講演が出来なくなっても、王立協会の幹事は元通りファラデーに俸給も払い、室も貸して置いて、出来るだけの優遇[#「優遇」に傍点]をした。
 実際、王立協会はファラデーが芽生で植えられた土地で、ここにファラデーは生長して、天才の花は爛漫《らんまん》と開き、果を結んで、あっぱれ協会の飾りともなり、名誉ともなったのであるから、かく優遇したのは当然の事と言ってよい。

     三〇 ファラデーの収入

 しかし、年俸一百ポンドと室と石炭とロウソク。これがその頃のファラデーの全収入[#「全収入」に傍点]であ
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