。欧洲では、下女を雇っても、初めから定めた仕事の外は、主人も命じないし、命じてもしない。夜の八時には用をしまうことになっていると、たとい客が来ておろうと、そんな事にはかまわない。八時になれば、さっさと用をやめて、自分の室に帰るなり、私用で外出するなりする。特別の場合で、下女が承知すれば用をさせるが、そのときは特別の手当をやらねばならぬ。デビーはファラデーに取っては恩人[#「恩人」に傍点]であるから、日本流にすれば、少々は嫌やな事も[#「少々は嫌やな事も」に傍点]なしてよさそうに思われるが、そうは行かない。この点はファラデーのいう所に理がある。しかし他方で、ファラデーは権力に抑えられることを非常に嫌った人で、また決して穏かな怒りぽくない人では無かったのである[#「穏かな怒りぽくない人では無かったのである」に傍点]。

     一七 デ・ラ・リーブ

 そのうちに、ファラデーに同情する人も出来て来た。一八一四年七月から九月中旬までゼネバに滞在していたが、デ・ラ・リーブはデビーの名声に眩《くら》まさるることなく、ファラデーの真価[#「真価」に傍点]を認め出した。その動機は、デビーが狩猟を好
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