こで話すことを以て名誉として、講師には別に謝礼は出さないことにしてある。それでも、講師は半年も一年も前から実験の準備にかかる。もちろん講師自身が全部をするのではない、助手が手伝いをするのではあるが。
これらの講義は、著者も滞英中、聴きに行ったことがある。聴衆は多くは半白の老人で、立派な紳士が来る。学者もあり、実業家もある。夫婦連れのもあるが、中には老婦人だけ来るのもある。自働車で来るのが多いという有様で、上流の紳士に科学の興味があるのは喜ばしいことではあるが、昔のファラデーを想い起すというような小僧や書生の来ておらないのには[#「昔のファラデーを想い起すというような小僧や書生の来ておらないのには」に傍点]、何となく失望を禁じ得ない[#「何となく失望を禁じ得ない」に傍点]。会員は多いようである。会員外の人は聴講料を出す。かなり高い。二回で半ギニー(十円五十銭)位であったと思う。一回分が丁度芝居の土間位の金高である。
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大陸旅行
一二 出立
ファラデーが助手となって、六個月ばかり経つと、ファラデーの一身上に新生面の開ける事件が起った。それはデビ
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