、アレキサンドロスの出ずることは出来ない。文化の進まざる時代の物語りとして読むには適していても、修養の料にはならない[#「修養の料にはならない」に傍点]。グラッドストーンのごときといえども、一国について見れば二、三人あり得るのみで、しかも大宰相たるは一時に一人のみ[#「一時に一人のみ」に傍点]しか存在を許さない。これに反して、科学者や哲学者や芸術家や宗教家は、一時代に十人でも二十人でも存在するを得、また多く存在するほど文化は進む[#「また多く存在するほど文化は進む」に傍点]。ことに科学においては、言葉を用うること少なきため、他に比して著しく世界的に共通で[#「世界的に共通で」に傍点]、日本での発見はそのまま世界の発見であり、詩や歌のごとく、外国語に訳するの要もない。
これらの理由により、科学者たらんとする者のために、大科学者の伝記があって欲しい[#「大科学者の伝記があって欲しい」に傍点]。しかし、科学者の伝記を書くということは、随分むずかしい[#「むずかしい」に傍点]。というのは、まず科学そのものを味った人であることが必要であると同時に多少文才のあることを要する。悲しいかな、著者は自
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