半より翌年にかけて、ファラデーは研究を休んだ。その後一八四八年の十二月[#「一八四八年の十二月」に傍点]に至りて発表したのが、「電気の実験研究」の第二十二篇[#「第二十二篇」に傍点]になっている、磁場におけるビスマスの性質を研究したものである。ビスマスの結晶を一様なる強さの磁場に吊すと、必ず一定の方向を取るので、(一様な強さの磁場に吊すのは、もともとビスマスに強い反磁性があるゆえ、磁場の強い所から弱い所へと動く性質がある。これの顕《あら》われ無い様にする)ためである。これは、結晶体の構造に方向性[#「構造に方向性」に傍点]があることを示すので、ビスマスのみならず、砒素、アンチモニーの結晶にも、同様の性質がある。なお研究の続きを一八五〇年三月[#「一八五〇年三月」に傍点]に発表した。(「電気の実験研究」第二十三篇[#「第二十三篇」に傍点])
 ファラデーは以前から、重力と電気との[#「重力と電気との」に傍点]間に関係あるべきを確信しておったが、その実験をしても、少しも結果を得なかった。その得ないままを、同年十一月[#「同年十一月」に傍点]に発表した(同上、第二十四篇[#「第二十四篇」に傍点])。また同時に、酸素、水素等の磁性[#「磁性」に傍点]の研究を発表し、酸素に強い磁性あることを記した(同上、第二十五篇[#「第二十五篇」に傍点])。なお磁気性に対する伝導の力すなわち誘磁率[#「誘磁率」に傍点]の研究と空気の磁性[#「空気の磁性」に傍点]の研究も発表した(同上、第二十六篇[#「第二十六篇」に傍点]および[#「第二十六篇[#「第二十六篇」に傍点]および」は底本では「第二十六篇およ[#「二十六篇およ」に傍点]び」]第二十七篇[#「第二十七篇」に傍点])[#「第二十七篇[#「第二十七篇」に傍点])」は底本では「第二十七篇)[#「二十七篇)」に傍点]」]。ただし、空気の磁性の研究は学者間に余り賛成を得なかった。

     二一 再び感応電流に就いて

 翌一八五一年[#「一八五一年」に傍点]には七月より十二月[#「七月より十二月」に傍点]の間、再び電磁気感応の研究をして、定量的の定律[#「定量的の定律」に傍点]を発見した。すなわち、一様の強さの磁場で針金を一様に動すとき、感応によりて生ずる電流の強さは、その運動の速さに比例し[#「運動の速さに比例し」に傍点]、従いて針金の切りたる磁気指力線の数に比例[#「磁気指力線の数に比例」に傍点]すというのである。
 次に、磁場の強さや大いさを測定するに、この定律を用いて、感応にて生ずる電流の強さの測定による方法を考えた。これらの研究は同年十二月[#「同年十二月」に傍点]並びに翌年[#「に翌年」に傍点][#「に翌年[#「に翌年」に傍点]」はママ]一月に発表し、「電気の実験研究」の第二十八[#「第二十八」に傍点]、二十九の両篇[#「二十九の両篇」に傍点]になっている。
 この後一八五二年[#「一八五二年」に傍点]に王立協会にて講演せる「磁気指力線」に関するものおよびフィロソフィカル・トランサクションに出せる「磁気指力線の性質」に関するものは、いずれも有名な論文である。
「電気の実験研究」の第三巻[#「第三巻」に傍点]は上の第十九篇より二十九篇[#「第十九篇より二十九篇」に傍点]までに、今述べた両論文と、前に述べたフィリップスに与えた手紙、それからこの後二、三年間に書いた断篇を収めたもので、一八五五年[#「一八五五年」に傍点]の出版に係り、総頁五百八十八で、第一巻より通じての節の数は約三千四百[#「節の数は約三千四百」に傍点]である。

     二二 晩年の研究

 ファラデーの研究はこの後にも続き、一八五六年[#「一八五六年」に傍点]には水の結晶を研究し、復氷の現象[#「復氷の現象」に傍点]を発見した。すなわち氷の二片を圧すと固まりて一片となるというので、これは周囲の空気の温度が氷点より少し高くても出来ることである。
 一八五九年[#「一八五九年」に傍点]に出版した「化学および物理学の実験研究」は、ファラデーの一番初めに発表した生石灰の分析の研究より一八五七年頃までの研究にて、化学並びに物理学に関した論文をまとめたもので、この外には狐狗狸《こくり》に関する論文もおさめてあり、巻末には「心の教育」という一八四四年五月六日[#「一八四四年五月六日」に傍点]、王立協会にてヴィクトリア女皇の良人アルバート親王、並びに一般の会員に対して講演したものも入れてある。総頁は四百九十六。
 実験室手帳によれば、ファラデーの行った最後の実験は一八六二年三月十二日で[#「最後の実験は一八六二年三月十二日で」に傍点]、光に対する磁場の影響[#「光に対する磁場の影響」に傍点]に関するものである。分光器にてスペクトルをつく
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