光にさらしつつ廻して見たが、やはり結果は無かった[#「やはり結果は無かった」に傍点]。
ファラデーがかようにいろいろとやっても見つからなかった作用も、後には器械が精密になったので、段々と見つかった[#「段々と見つかった」に傍点]。その二、三を述べよう。セレニウムは光に[#「光に」に傍点]あてるとその電気抵抗が変る。また光にあてて電流を生ずる[#「電流を生ずる」に傍点]ものもベッケレルが発見したし、かつ菫外線を金属にあてると、金属から電子の飛び出ることもヘルツが発見した。
さてファラデーは、以上の研究をまとめてローヤル・ソサイテーに出したのが、一八四五年十一月六日[#「一八四五年十一月六日」に傍点]のことで、これが「電気の実験研究」第十九篇[#「第十九篇」に傍点]になっている。表題には、「光の磁気を帯ぶること」または「磁気指力線の照明」というような、妙な文句がつけてある。
一八 磁性の研究
ファラデーのこの論文がまだ発表されない前に、ファラデーはまた別の発見[#「別の発見」に傍点]をした。すなわち十一月四日[#「十一月四日」に傍点]に、先頃他から借りて来た強い磁石で、前に結果の出なかった実験を繰り返してやって見て、好成績を得た。それは普通に磁性が無い[#「普通に磁性が無い」に傍点]と思われている種々の物体も、みな磁性がある[#「磁性がある」に傍点]ことを発見したのである。これも第一番に、前の重ガラスで発見[#「重ガラスで発見」に傍点]したので、ファラデーの手帳に書いてあるのにも、
「鉛の硼硅酸塩、すなわち重ガラスの棒を取った。これは前の磁気の光に対する作用を研究するときに用いたもので、長さ二インチ、幅と厚さは各々〇・五インチである。これを磁極の間に吊して、振動の静まるのを待つ。そこで電池をつないで磁気を生じさせたから、ガラスの棒はすぐに動いて[#「動いて」に傍点][#「すぐに動いて[#「動いて」に傍点]」は底本では「すぐに動い[#「に動い」に傍点]て」]廻り出し、磁気指力線に直角の位置に来た[#「直角の位置に来た」に傍点]。少々振動させても、ここで静止する。手でこの位置より動しても、すぐに元の所にもどる。数回やっても、その通りであった。」
これから種々の物体について、やって見た。結晶体、粉、液体、酸、油。次には蝋《ろう》、オリーブ油、木、牛肉(新鮮のものおよび乾いたもの)、血。いずれもみな反磁性[#「反磁性」に傍点]を示し、ことにビスマスは反磁性を強く示した。
これらの研究の結果は一八四五年十二月[#「一八四五年十二月」に傍点]に発表し、例の「電気の実験研究」第二十篇[#「第二十篇」に傍点]におさめてある。同第二十一篇[#「第二十一篇」に傍点]はこの研究の続篇で、翌年一月[#「翌年一月」に傍点]に発表した。これは鉄の化合物に対する研究で、固体でも液体でも、塩基の部分に鉄をもつ物はみな磁性を示し、絵具のプルシァン・ブリューや緑色のガラス瓶に至るまでも磁性を示すことが出ている。
一九 光の電磁気説
一八四六年に王立協会でファラデーのやった金曜の夜の[#「金曜の夜の」に傍点]講演に、「光、熱等、輻射のエネルギーとして空間を伝わる振動は、エーテルの振動ではなくて、物質間にある指力線の振動である[#「指力線の振動である」に傍点]」という句があった。この考は友人フィリップスに送った手紙[#「手紙」に傍点]にくわしく書いてあり、またこの手紙を、「光の振動についての考察」という題で、同年五月[#「同年五月」に傍点]のフィロソフィカル・マガジンにも出した。
これが、ファラデーの書いたものの中で、最も想像的なものとして著名なので[#「最も想像的なものとして著名なので」に傍点]、少しも実験の事は書いてない[#「少しも実験の事は書いてない」に傍点]。恐らくこの時こそ[#「恐らくこの時こそ」に傍点]、理論家としてファラデーが最高潮に達した時であろう[#「理論家としてファラデーが最高潮に達した時であろう」に傍点]。
上の物質間にある指力線の振動というのが、今日の言葉でいうと、電子の間にある電磁気指力線の振動[#「振動」に傍点]の事で、これが光、熱等の輻射に外ならずというのである。この考こそ後になって、マックスウェルが理論的に完成し、ヘルツが実験上に確かめた光の電磁気説である。マックスウェルの書いた物の中にも、
「ファラデーによりて提出された光の電磁気説は、余がこの論文に精《くわ》しく述ぶるものと、実質において同じである[#「実質において同じである」に傍点]。ただ一八四六年の頃には、電磁波の伝わる速度を計算する材料の存在しなかった事が、今日との相違である」と。
二〇 その他の研究
この一八四六年の後
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