ソーダを用いたが、結果は出て来なかった[#「出て来なかった」に傍点]。そこで、液体をいろいろと変えて、十日間[#「十日間」に傍点]実験をつづけた。その間に使ったのは蒸溜水、砂糖の溶液、稀硫酸、硫酸銅等であった。それに電流も、偏光の進む方向に通したり、これに直角に通したり、なおこの電流も、直流を用いたり、交流を用いたりしたが、それにも関わらず[#「それにも関わらず」に傍点]、少しも結果が出なかった[#「少しも結果が出なかった」に傍点]。
 そこで実験の方法を変えて、固体の絶縁物[#「固体の絶縁物」に傍点]をとり、静電気の作用[#「静電気の作用」に傍点]の下に置いて、この内を通る光に何[#「光に何」に傍点]にか変化が起るかと調べ出した。
 最初にやったのは、四角なガラスの向い合った両面に金属の薄片を貼りつけ、発電機の電極につなぐと、ガラスの内部を通る偏光に、何にか変化が起るかと調べたのであるが、やはり変化は見えなかった[#「やはり変化は見えなかった」に傍点]。
 それからガラスの代りに、水晶、氷洲石《アイスランド・スパー》、重ガラスを用い、またタルペンチン、空気等も用いて見、なお偏光も電気力の方向に送ったり、これに直角に送ったりした。さらに静電気のみならず、電流にして速い交流も使っても見た。しかし、いずれの場合にも作用は少しも無かった[#「作用は少しも無かった」に傍点]。

     一七 磁気に働かるる光

 そこで、電気力の代りに磁気力[#「磁気力」に傍点]を用いたところ、今度は直ぐに成功した[#「今度は直ぐに成功した」に傍点]。その道順は、
「一八四五年九月十三日[#「一八四五年九月十三日」に傍点]、
「今日は磁気力で実験をやった。これを透明な種々の物体に、種々の方向に通し、同時に物体内を通した偏光をニコルで調べた。」
 この種々の物体というのは、空気、フリントガラス、水晶、氷洲石で、朝から一つ一つ取りて試み[#「朝から一つ一つ取りて試み」に傍点]、また磁石の極を変えたり、偏光を送り込むニコルの位置を変えたり、磁石をつくる電池を強くしたりしたが、どうしても作用が無い。そこでファラデーは最後に重ガラス[#「最後に重ガラス」に傍点]を取った。これは以前、光学器械に用うるガラスの研究をしたときに作ったものである。
「重ガラスの一片、その大さは二インチおよび一・八インチ、厚さ〇・五インチ。鉛の硼硅酸塩。これで実験した。同じ磁極または反対の磁極を(偏光につきていう)両側に置きて、直流並びに交流で実験したが、結果は見えない。されど反対の磁極を一方の側に置いて実験したら、偏光に作用した[#「偏光に作用した」に傍点]。これによって、磁気力と光とは互に働き合うことを知り得た。これは非常に有望のことで、自然界の力の研究に大なる価値があるだろう。」
と書いた。
 それから四日間休み[#「四日間休み」に傍点]、その間にもっと強い磁石を他から借りて来た。これで実験したところ、著しく作用が現われた。かつ磁石の作用は偏りの面を一定の角だけ廻転さすので、この角は磁気力の強さにより、また磁気力の生ずる電流の方向によることも発見した。
 そこで、前に成功しなかった種々の物体を取って再び試みたところ、どれもこれも好成績を示した[#「好成績を示した」に傍点]。
 十月三日[#「十月三日」に傍点]には、磁場に置いてある金属の表面から反射する光[#「反射する光」に傍点]につきて実験し、鋼鉄の釦《ボタン》ではその面から反射する光の偏りの面が廻転するようであった。しかし、この釦の面はごく平かでないので、結果も確実とは言えなかった。
 磁場に置いてある金属の面で光が反射する場合に、偏りの面の廻転することは、後にケルが確かめた[#「確かめた」に傍点]。ケルの効果[#「ケルの効果」に傍点]と呼ばれるのがそれである。
 十月六日[#「十月六日」に傍点]には、ガラス瓶に液体を入れ、これを磁場に置いて、何にか機械的または磁気的作用[#「機械的または磁気的作用」に傍点]が起りはせぬかを調べたが、これも駄目であった[#「駄目であった」に傍点]。
 次にファラデーは、磁気が光に作用するからには、反対に光から磁気を生じ得る[#「光から磁気を生じ得る」に傍点]のではあるまいかと考えた。十月十四日は[#「十月十四日は」に傍点]幸いに太陽が強く輝いておったので、この実験を試みた。コイルに作った針金を電流計につないで置き、コイルの軸の方向に太陽の光を導き入れたので、初めにはコイルの外面を葢《おお》うて内面のみに日光をあて、次には内面を葢うて外面にのみ日光をあてた。いずれも結果は出て来なかった[#「結果は出て来なかった」に傍点]。
 それからコイルの内に磁気を全く帯《お》びない鋼鉄の棒を入れ、これを日
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