へ、十二および十三の両日はテームス河のウォータールー橋に行った。これらの実験の結果はすぐにまとめて、ローヤル・ソサイテーで発表し、後に「電気の実験研究」の第二篇[#「第二篇」に傍点]にした。
 話が前に戻るが、一八三一年に電気感応の大発見をしたときに、ファラデーはまだ内職の化学分析をやっておったし、十一月まではローヤル・ソサイテーの評議員でもあったが、この外にもなお毛色の少し変った研究をしておった。
 すなわち、振動する板面[#「振動する板面」に傍点]に関する論文と、光学上の錯覚[#「光学上の錯覚」に傍点]の論文とを出した。前のは、振動する板の上に細粉を撒いて置くと、砂のような重いものは面上の振動のない所に集り、これに反して、軽いリコポジウムのような物は、振動の最も強い所に集る。ファラデーはこの理由として、運動の激しい所には小さい渦動[#「小さい渦動」に傍点]が出来て、軽い粉はこれに巻き込まれるためだということを明かにした。また後の論文は、廻転せる車輪の歯の間から物を見るような場合に起る錯覚の議論で、今日の活動写真の基礎を開いたともいえる。
 翌一八三二年[#「一八三二年」に傍点]にも、ファラデーは続いて種々の研究をした。静電気や、動物電気や、感応によりて生ずる電気。これらの電気はいずれも電池より出る電流と同様に化学作用をすることを確かめたのを手初めとして、どの電気も全く同一のものなることを確かめた[#「どの電気も全く同一のものなることを確かめた」に傍点]。今日では自明の事のように思われるが、その頃ではこれも重要な結果であった。これは一八三三年一月[#「一八三三年一月」に傍点]に発表したが、「電気の実験研究」の第三篇[#「第三篇」に傍点]になっている。

     一三 電気分解

 次にファラデーの取りかかった研究は、電流の伝導[#「電流の伝導」に傍点]の問題であった。
 水[#「水」に傍点]は[#「 水[#「水」に傍点]は」は底本では「水[#「水」に傍点]は」]電流を導く[#「導く」に傍点]が、それが固体になって氷[#「氷」に傍点]となると、電流を導かない[#「導かない」に傍点]。これから想いついて、ある固体[#「固体」に傍点]とそれの溶解して液体[#「液体」に傍点]となった場合とでは、電流の伝導[#「伝導」に傍点]にどれだけ違いが起るかを調べた。その結果は、金属[#「金属」に傍点]だと[#「金属[#「金属」に傍点]だと」は底本では「金属だ[#「属だ」に傍点]と」]、固体のときでも液体のときでも、よく伝導してその模様に変りはない。脂肪[#「脂肪」に傍点]だと、固体のときでも液体のときでも、電流を導かない。その他の物体では、固体だと電流を伝導[#「固体だと電流を伝導」に傍点]しないが、液体に[#「液体に」に傍点]なると伝導する[#「伝導する」に傍点]。塩化鉛とか、塩化銀とかいうような化合物は、みなこれに属する。かつ液体になっていて、電流を伝導する場合には、その物が分解して電極に集ること[#「電極に集ること」に傍点]も確かめられた。これらの結果は一八三三年四月[#「一八三三年四月」に傍点]に発表した。(「電気の実験研究」の第四篇[#「第四篇」に傍点])
 ファラデーはなおも研究をつづけて、一定量の電気[#「一定量の電気」に傍点]が同じ液体内を通る場合には、いつも同じだけの作用をすることを確かめた。また液体が分解して電極に集るのは[#「電極に集るのは」に傍点]、電極に特別の作用があって、液体の内から物体を引きつけるためではない。物体が液体になりているとき、既に二種の物に分解している[#「二種の物に分解している」に傍点]ので、電流の通るときにその方向と、反対の方向とに流れ動く[#「流れ動く」に傍点]ため、電極に集るのであることを確かめた。これは一八三三年六月[#「一八三三年六月」に傍点]に発表した。(「電気の実験研究」の[#「「電気の実験研究」の」は底本では「「電気の実験研究の」の」]第五篇[#「第五篇」に傍点])
 次に別種の問題に着手し、金属がガス体の化合をひき起すことを研究した。これは一八三四年正月[#「一八三四年正月」に傍点]に発表した。(「電気の実験研究」の第六篇[#「第六篇」に傍点])
 その年の正月[#「正月」に傍点]の終りから二月[#「二月」に傍点]にかけて、電気分解[#「電気分解」に傍点]に関する大発見が発表された。それは「電気の実験研究」の第七篇[#「第七篇」に傍点]になっているが、まずファラデーは電池の電極を、単に電流の入り口と出口に過ぎないからとて、アノード(昇り道)およびカソード(降り道)という名称[#「名称」に傍点]をつけ、また液体内で分解している物に、アニオン(昇り行く物)およびカチオン(降り行く物)
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