へ休養に行った。しかし、すぐ帰って来て、十二月五日[#「十二月五日」に傍点]には再び研究に取りかかり、同十四日[#「同十四日」に傍点]には、地球の磁気を用いて感応電流が生ずるや否やを調べて、良い結果を得た。
一〇 その後の研究
ファラデーは恒例として、実験が成功した場合でも、しない場合でも、出来るだけ作用を強くして実験して見る[#「作用を強くして実験して見る」に傍点]ので、この場合にもその通りにした。初めには、四インチ四方の板が十対ある電池を十個[#「十個」に傍点]用いた。これで成功はしたのであるが、しかし電池を段々と増して、百個[#「百個」に傍点]までにした。
百個の電池から来る電流を切ったり、つないだりすると、感応作用は強いので、コイルにつないである電流計の磁針は、四、五回もぐるぐると廻って、なお大きく振動した。
また電流計の代りに、小さい木炭の切れを二つ入れて置くと、木炭の接触の場所で小さい火花が飛ぶ[#「火花が飛ぶ」に傍点]。ファラデーは火花の出るのを電流の存在する証拠と考えておったので、これを見て喜んだ。しかし、まだこの感応電流が電池から来る電流のように、生理的[#「生理的」に傍点]並びに化学的の作用[#「化学的の作用」に傍点]を示すことは見られなかった。
感応作用が発明されると、アラゴの実験はすぐに説明できた。すなわち、銅板に感応で電流を生じ、これが磁針に働いてその運動を止めるのである。
ファラデーはまた、この感応作用を使い、電流を生ずる機械[#「電流を生ずる機械」に傍点]を作ろうとした。初めに作ったのは、直径十二インチ、厚さ五分の一インチの銅板を真鍮の軸で廻し、この板を大きな磁石の極の間に置き、その両極の距離は二分の一インチ位にし、それから銅板の端と軸とから針金を出して、電流を取ったのである。
この後にも、色々な形の機械をこしらえた。板を輪にしたり、または数枚の板を用いたりした。しかし、最後に「余は電気感応に関する新しい事実と関係とを発見することを務めん。電気感応に関する既知のものの応用は止めにしよう。これは他の人が[#「他の人が」に傍点]追い追いと[#「他の人が[#「他の人が」に傍点]追い追いと」は底本では「他の人が追[#「の人が追」に傍点]い追いと」]やるであろうから。」というて止めた。ファラデーはこの後いつも応用がかった事に[#「応用がかった事に」に傍点]近づいてくると、そこで止めてしまい[#「そこで止めてしまい」に傍点]、他の新しい方面に向って進んで行った。そんな訳で、専売特許なども一つも取らなかった[#「専売特許なども一つも取らなかった」に傍点]。
一一 媒介物の作用
この論文の中に、ファラデーは次のような事も書いて置いた。
「針金は磁気よりの感応で電流を生ずるのであるから、恐らくある特別の状態[#「特別の状態」に傍点]にあるらしい。
「これを友人とも相談して、エレクトロトニックの状態[#「エレクトロトニックの状態」に傍点]と名づけることにした。
「この状態は、その継続している間は別に電気的作用を示さない。しかし、コイルなり、針金なりが、磁石の方へ近づくか、または遠ざかる場合には、その近づくかまたは遠ざかりつつある間だけ[#「つつある間だけ」に傍点]、感応作用によりて、電流が通る。これはその間、エレクトロトニックの状態が高い方なりまたは低い方なりに変るからで[#「変るからで」に傍点]、この変化と共に電流の発生が伴うのである。」
元来ファラデーは、物と物とが相離れた所から直接に作用し合うというような考を嫌ったので、引力にしても斥《そ》力にしても、相離れた所から作用を及ぼすように見えても、実際は[#「実際は」に傍点]中間に在る媒介物[#「媒介物」に傍点]の内に起る作用の結果が、この形で現われるものだという風に考えた。
ファラデー自身が前に発見した電磁気廻転にしても、電流の通っている針金の周りの空間が、その電流のためにある作用を受けているとして考えられる。また磁極の周りの空間にも、例の磁気指力線があるとして考えられる。かように、たとい中間には眼に見える物体が無い場合でも、その空間にある媒介物[#「ある媒介物」に傍点]が存在し、これがある状態になっているものと考えられる。それゆえ針金を動かせば感応で電流が生ずる場合にも、またその針金の在る場所は、すでにある特別の状態[#「ある特別の状態」に傍点]になっているものと考えらるるので、ファラデーはこれにエレクトロトニックという名称をつけたのである。
一二 その他の研究
一八三二年の正月[#「一八三二年の正月」に傍点]には、ファラデーは地球の自転のために生ずる電流を調べようというので、十日にケンシントンの公園
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