という名前[#「名前」に傍点]をつけた。
ファラデーは新しい発見をなし、命名[#「命名」に傍点]の必要を感ずると、当時博学者として有名であったホェーウェルに相談するを例とした。上の命名もこのホェーウェルが案出したものである。
次に、電流の強さを水の電気分解を用いて測定[#「水の電気分解を用いて測定」に傍点]することにした。これで電流計が出来た。そこで一定量の電気[#「一定量の電気」に傍点]を用いて、種々の液体[#「液体」に傍点]を分解して電極に現われ来る分量[#「分量」に傍点]を測定した。これで電気分解の定律[#「電気分解の定律」に傍点]を発見した。
ファラデーの書いた中には、「電極に現われて来る割合を表わす数を、電気化学当量[#「電気化学当量」に傍点]と呼ぶことにする。しからば水素、酸素、塩素、ヨウ素、鉛、錫はイオンで、前の三つはアニオン。後の三つはカチオンである。その電気化学当量はほとんど一、八、三六、一二五、一〇四、五八である。」
かくして、今日ファラデーの定律と呼ばれている電気分解の定律は発見された。
次にこの定律を電池に応用した結果を一八三四年六月[#「一八三四年六月」に傍点]に発表した。(「電気の実験研究」の第七篇[#「第七篇」に傍点])
これにより再び感応電流の研究にもどり、電流を切るときに生ずる火花から電流が自己感応[#「自己感応」に傍点]をすることを発見した。これは同年の十一月十三日[#「十一月十三日」に傍点]で、翌日次の様に書いた。「電流の各部分は感応によりて同一の電流の他の部分にも作用し、かつ同一の針金にも、また同一の針金の同一の部分にも作用する」と。
これらは一八三四年末にまとめて、翌年一月[#「翌年一月」に傍点]に発表し、「電気の実験研究」の第九篇[#「第九篇」に傍点]になっている。
それからまた電池[#「電池」に傍点]の研究に戻った。結果は同年六月[#「同年六月」に傍点]に発表した。(「電気の実験研究」の第十篇[#「第十篇」に傍点])
一四 静電気の研究
かように、初めから満五年にもならない間に、これだけの大発見が続いて出たのは、実に驚くの外はない。そのためもあろうが、ファラデーは幾分元気が衰えて来たように見えた。それゆえ以前ほどの勢いは無くなったが、それでもまだ静電気[#「静電気」に傍点]に関する大発見をした。
すなわち、一八三五年[#「一八三五年」に傍点]には静電気の研究に取りかかり、静電気の感応も中間の媒介物[#「媒介物」に傍点]によるのであろうと思って、調べ出したが、中途でフッ素[#「フッ素」に傍点]の研究に変り、夏になるとスイスに旅行したりして休養し、前後八個月ばかりも中断してから再び静電気の研究に戻った。
「先ず電気は導体の表面に在るのか、または導体と接する媒介物(絶縁物)の表面に在るのか」という問題から始めて、ガラスのような物を取り、正負電気の間に置いたとして、「感応の現象があるから、電気は導体の方には無く、かえって媒介物の方にあるのだ[#「媒介物の方にあるのだ」に傍点]」と書いた。十二月[#「十二月」に傍点]にはまたフッ素を研究しかけたが、断然止めようと決心し、その四日[#「四日」に傍点]からは静電気のみの研究に没頭した。最初は静電気の起す作用を、電気分解のときに電流の流れ行くのに較《くら》べて考えておったが、数日後には磁気が指力線に沿うて働く[#「磁気が指力線に沿うて働く」に傍点]のと同様だと考えついて、
「空気中における感応は、ある線に沿うて[#「ある線に沿うて」に傍点]起るので、多分実験上、見出し得るだろう」と書き、五日過ぎて[#「五日過ぎて」に傍点]からは、「電気は空気、ガラス等にあっては、みな両極性[#「両極性」に傍点]を有して存在する。金属は導体なるがために、かかる状態を保持することが出来ない」と書いた。
かように、電気は導体に在るのではなくて、媒介物たる絶縁物内に正負相並んで存在し[#「絶縁物内に正負相並んで存在し」に傍点]、これが導体に接する所[#「これが導体に接する所」に傍点]、いわば境界の所で[#「いわば境界の所で」に傍点]、正なり負なりの電気として現われる[#「正なり負なりの電気として現われる」に傍点]、ということを発見した。
またファラデーの実験として有名なのに、十二フィートの四角な金網の籠《かご》を作り、これに非常に強い電気をかけても、その内には[#「その内には」に傍点]少しも電気作用が無い[#「無い」に傍点]というのがある。これもこの頃やったので、これらの研究は一八三七年十二月[#「一八三七年十二月」に傍点]と同三八年二月[#「同三八年二月」に傍点]とに発表し、「電気の実験研究」の第十一[#「第十一」に傍点]および第十
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