に頼んで、底の銅を分析してもらったが、少しも鉄を含んではいなかった[#「少しも鉄を含んではいなかった」に傍点]。
そこで、アラゴの考えるには、銅が磁針の運動を止めるからには、反対に銅を動したなら[#「銅を動したなら」に傍点]、磁針は動き出すだろうと[#「磁針は動き出すだろうと」に傍点]。すなわち、磁針の下にある銅を廻転して見た。果して磁針はこれに伴って廻り出した。なおこの運動は、磁針と銅との間に紙のような物を[#「紙のような物を」に傍点]入れて置いても、少しも影響を受けない。その後には軸に取り附けた銅板の下で磁針を廻すと、上方の銅板が廻り出すことも確かめた。
八 感応電流の発見
ファラデーは一八二八年四月[#「一八二八年四月」に傍点]にも、また磁石で電流を起そうと試みたが、これも結果が出なかった[#「これも結果が出なかった」に傍点]。なぜ今までの実験で何時も結果が出なかったのか。原因は磁石も銅線のコイルも動かなかったためである[#「動かなかったためである」に傍点]。
一八三一年の夏[#「一八三一年の夏」に傍点]にまたやり出した。このたびは鉄の環《わ》を取り、その半分に銅線Aを巻き、またこれと少し離れて、他の半分には別の銅線Bを巻き、その先端は磁石の近くに置いた。これは電流の通ったかどうかを、磁石の振れで見るためである。前の銅線Aに電流を通ずると[#「電流を通ずると」に傍点]、鉄環は磁気を帯びる。が、この瞬間に銅線Bの近くにある磁石がちょっと動くらしいのを発見した[#「瞬間に銅線Bの近くにある磁石がちょっと動くらしいのを発見した」に傍点]。またAの電流を切ると[#「電流を切ると」に傍点]、その瞬間にも[#「その瞬間にも」に傍点]磁石が動くらしいのを見た。
今日、王立協会の玄関の所にファラデーの立像がある。その手に環を持っているのは、今述べた実験の環[#「実験の環」に傍点]をあらわしたものだ。それから、この実験に用いた真物《ほんもの》の環も、王立協会になお保存されてある。
それから八月三十日[#「八月三十日」に傍点]に、実験した手紙には、「この瞬間的[#「瞬間的」に傍点]の作用がアラゴの実験で銅板の動くときに影響があることに関係[#「関係」に傍点]あるのではないか。」と書いた。
次に実験したのは九月二十四日[#「九月二十四日」に傍点]で、十個の
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