く死んだが、幼い時から科学や数学が好きでかつ上手であった。コンコード(またルムフォードとも呼ぶ)から教師に呼ばれたのが十九歳[#「十九歳」に傍点]の時で、風采が美しかったが、金持のロルフ大佐の寡婦《かふ》と結婚した。このとき夫人は三十三歳[#「夫人は三十三歳」に傍点]である。その中にアメリカ独立戦争が起ったが、知事のウエントオースはルムフォードの馬に乗った姿を見て気に入り、一躍して少佐にした。しかし友人から猜《そね》まれて、独立軍に忠実でないという嫌疑を受け、調べられたりしたので、終《つい》に一七七五年に英国に逃げて来て(妻子は置いたまま)、殖民省の官吏になった。またとんとん拍子で出世して、四年の内には次官にまで昇進した。この間に科学の研究をし、ことに火薬の研究が有名で、ローヤル・ソサイテーの会員[#「会員」に傍点]にも推選された。一七八二年には、大佐に任命されて、アメリカにおる英国の騎兵隊の総指揮官になり、威風堂々とニューヨルクに繰り込み独立軍と戦いに来た[#「独立軍と戦いに来た」に傍点]。
 しかし、アメリカは独立したので、翌年英国に帰った。うまい事もないので、オーストリアとトルコとの戦争に加わって、一と旗あげよう[#「一と旗あげよう」に傍点]と思い立ち、出かけたが、途中でストラスブルグを過ぐる時、ババリアのマキシミリアン王子がフランスの大将という資格で観兵式をやっている所を通りかかった。マキシミリアンはルムフォードの雄々しい姿を見て呼びとめ、話をしている裡《うち》に、アメリカの独立戦争の時に対手方であったこともわかり、マキシミリアンは叔父の選挙公にあてた推挙状をくれた。それでババリアに仕えることになり、英国王の許可を受けたが、このとき英国王は彼をナイトに叙した[#「ナイトに叙した」に傍点]。一七八四年のことで、年は三十一歳[#「年は三十一歳」に傍点]であった。それからババリアで、陸軍大臣[#「陸軍大臣」に傍点]、警視総監[#「警視総監」に傍点]、侍従兼任[#「侍従兼任」に傍点]という格で、軍隊の改革をやる、兵器の改良をやる、貧民の救助をやる、マンハイムやミュンヘンあたりの沼地を開拓するという風で、非常に敏腕を振った[#「非常に敏腕を振った」に傍点]。大砲の改良につきて研究していたとき、砲身に孔を開ける際に熱を出すのを見て、仕事より熱の生ずる[#「仕事より熱の生
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