いお化《ばけ》である。夫《それ》は深刻《しんこく》な印度《いんど》の化物《ばけもの》とは比《くら》べものにならぬ。例《たと》へば、ケンタウルといふ惡神《あくしん》は下半身《しもはんしん》は馬《うま》で、上半身《かみはんしん》は人間《にんげん》である。又《また》ギカントスは兩脚《れうあし》が蛇《へび》で上半身《かみはんしん》は人間《にんげん》、サチルスは兩脚《れうあし》は羊《ひつじ》で上半《かみはん》が人間《にんげん》である。凡《およ》そ眞《しん》の化物《ばけもの》といふものは、何處《どこ》の部分《ぶぶん》を切《き》り離《はな》しても、一|種《しゆ》異樣《いやう》な形相《げうさう》で、全體《ぜんたい》としては渾然《こんぜん》一|種《しゆ》の纏《まと》まつた形《かたち》を成《な》したものでなければならない。然《しか》るに希臘《ぎりしや》の化物《ばけもの》の多《おほ》くは斯《かく》の如《ごと》く繼合《つぎあは》せ物《もの》である。故《ゆゑ》に眞《しん》の化物《ばけもの》と言《い》ふことは出來《でき》ないのである。然《しか》らば北歐羅巴《きたようろつぱ》の方面《はうめん》はどうかと見遣《みや》
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