じやしん》人首《じんしゆ》であつて、神農氏《しんのうし》が人身《じんしん》牛首《ぎうしゆ》である。恁《こ》ういふ風《ふう》に支那人《しなじん》は太古《たいこ》から化物《ばけもの》を想像《さうざう》する力《ちから》が非常《ひぜう》に強《つよ》かつた。是皆《これみな》國土《こくど》の關係《くわんけい》による事《こと》と思《おも》はれる。
 更《さら》に印度《いんど》に行《ゆ》くと、印度《いんど》は殆《ほとん》ど化物《ばけもの》の本場《ほんば》である。印度《いんど》の地形《ちけい》も支那《しな》と同《おな》じく極《きは》めて廣漠《かうばく》たるもので、其《その》千|里《り》の藪《やぶ》があるといふ如《ごと》き、必《かなら》ずしも無稽《むけい》の言《げん》ではない。天地開闢以來《てんちかいびやくいらい》未《いま》だ斧鉞《ふいつ》の入《い》らざる大森林《だいしんりん》、到《いた》る處《ところ》に蓊鬱《おううつ》として居《ゐ》る。印度河《いんどかは》、恒河《こうか》の濁流《だくりう》は澎洋《ほうやう》として果《はて》も知《し》らず、此《この》偉大《ゐだい》なる大自然《たいしぜん》の内《うち》には、
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