物《ばけもの》とは餘程《よほど》範圍《はんゐ》を異《こと》にしてゐる。先《ま》づばけものとはどういふものであるかといふに、元來《ぐわんらい》宗教的信念《しうけうてきしんねん》又《また》は迷信《めいしん》から作《つく》り出《だ》されたものであつて、理想的《りさうてき》又《また》は空想的《くうさうてき》に或《あ》る形象《けいしやう》を假想《かさう》し、之《これ》を極端《きよくたん》に誇張《こてう》する結果《けつくわ》勢《いきほ》ひ異形《いげう》の相《さう》を呈《てい》するので、之《これ》が私《わたし》のばけものゝ定義《ていぎ》である。即《すなは》ち私《わたし》の言《い》ふばけものは、餘程《よほど》範圍《はんゐ》の廣《ひろ》い解釋《かいしやく》であつて、世間《せけん》の所謂《いはゆる》化物《ばけもの》は一の分科《ぶんくわ》に過《す》ぎない事《こと》となるのである。世間《せけん》で一|口《くち》[#ルビの「くち」は底本では「くに」]に化物《ばけもの》といふと、何《なに》か妖怪變化《えうくわいへんげ》の魔物《まもの》などを意味《いみ》するやうで極《きは》めて淺薄《せんぱく》らしく思《おも》はれる
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