か』と。
 なるほど、一|應《おう》理屈《りくつ》はあるやうであるが、予《よ》の見《み》る所《ところ》は全然《ぜん/\》これに異《こと》なる。
 問題《もんだい》は決《けつ》してしかく單純《たんじゆん》なものではなくして、別《べつ》に深《ふか》い精神的理由《せいしんてきりゆう》があると思《おも》ふ。
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 日本《にほん》の建築《けんちく》が古來《こらい》木造《もくざう》を以《もつ》て一|貫《くわん》して來《き》た原因《げんいん》は、第《だい》一に、わが國《くに》に木材《もくざい》が豊富《ほうふ》であつたからである。
 今日《こんにち》ですら日本全土《にほんぜんど》の七十パーセントは樹木《じゆもく》を以《もつ》て蔽《おほ》はれてをり、約《やく》四十五パーセントは森林《しんりん》と名《な》づくべきものである。
 いはんや太古《たいこ》にありては、恐《おそ》らく九十パーセントは樹林《じゆりん》であつたらうと思《おも》はれる。
 この樹林《じゆりん》は、檜《ひのき》、杉《すぎ》、松等《まつとう》の優良《いうれう》なる建築材《けん
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