與《あたふ》ることは先《まづ》ないといつてもよい。
 即《すなは》ち太古《たいこ》の國民《こくみん》は、頻々《ひん/\》たる地震《ぢしん》に對《たい》して、案外《あんぐわい》平氣《へいき》であつたらうと思《おも》ふ。
       二 何故太古に地震の傳説がないか
 頻々《ひん/\》たる地震《ぢしん》に對《たい》しても、古代《こだい》の國民《こくみん》は案外《あんぐわい》平氣《へいき》であつた。いはんや太古《たいこ》にあつては都市《とし》といふものがない。
 こゝかしこに三々五々のバラツクが散在《さんざい》してゐたに過《す》ぎない。巨大《きよだい》なる建築物《けんちくぶつ》もない。
 たとひ或《ある》一二の家《いへ》が潰倒《くわいたう》しても、引《ひき》つゞいて火災《くわさい》を起《お》こしても、それは殆《ほとん》ど問題《もんだい》でない。
 罹災者《りさいしや》は直《たゞち》にまた自《みづか》ら自然林《しぜんりん》から樹《き》を伐《き》つて來《き》て咄嗟《とつさ》の間《ま》にバラツクを造《つく》るので、毫《がう》も生活上《せいくわつじやう》に苦痛《くつう》を感《かん》じない。
 いは
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