れう》である。
 太古《たいこ》の日本家屋《にほんかおく》は、匠家《せうか》のいはゆる天地根元宮造《てんちこんげんみやづくり》と稱《しやう》するもので無造作《むざうさ》に手《て》ごろの木《き》を合掌《がつしやう》に縛《しば》つたのを地上《ちじやう》に立《た》てならべ棟木《むなぎ》を以《もつ》てその頂《いたゞき》に架《か》け渡《わた》し、草《くさ》を以《もつ》て測面《そくめん》を蔽《おほ》うたものであつた。
 つまり木造《もくざう》草葺《くさふき》の三|角形《かくけい》の屋根《やね》ばかりのバラツクであつた。
 いつしかこれが發達《はつたつ》して、柱《はしら》を建《た》てゝその上《うへ》に三|角《かく》のバラツクを載《の》せたのが今日《こんにち》の普通民家《ふつうみんか》の原型《げんけい》である。
 斯《か》くの如《ごと》き材料《ざいれう》構造《こうざう》の矮小《わいせう》軟弱《なんじやく》なる家屋《かをく》は殆《ほとん》ど如何《いか》なる激震《げきしん》もこれを潰倒《くわいたう》することが出來《でき》ない。
 たとひ潰倒《くわいたう》しても人《ひと》の生命《せいめい》に危害《きがい》を
前へ 次へ
全21ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
伊東 忠太 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング