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 外人《ぐわいじん》[#ルビの「ぐわいじん」は底本では「ぐわんじん」]の地震説《ぢしんせつ》は一|見《けん》甚《はなは》だ適切《てきせつ》であるが如《ごと》くであるが、要《えう》するにそは、今日《こんにち》の世態《せたい》をもつて、いにしへの世態《せたい》を律《りつ》せんとするもので、いはゆる自家《じか》の力《ちから》を以《もつ》て自家《じか》を強壓《けうあつ》するものであると思《おも》ふ。
 換言《くわんげん》すれば、一|種《しゆ》の自家中毒《じかちうどく》であると思《おも》ふ。
 そも/\日本《にほん》には天地開闢以來《てんちかいびやくいらい》、殆《ほとん》ど連續的《れんぞくてき》に地震《ぢしん》が起《お》こつてゐたに相違《さうゐ》ない。その程度《ていど》も安政《あんせい》、大正《たいしやう》の大震《だいしん》と同等《どうとう》若《も》しくはそれ以上《いじやう》のものも少《すくな》くなかつたらう。
 しかし太古《たいこ》における日本《にほん》の世態《せたい》は決《けつ》してこれが爲《ため》に大《だい》なる慘害《さんがい》を被《かうむ》らなかつたことは明瞭《めい
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