なかつたかを説明《せつめい》せねばならぬ。
 火災《くわさい》は震災《しんさい》よりも、より頻繁《ひんぱん》に起《お》こり、より悲慘《ひさん》なる結果《けつくわ》を生《しやう》ずるではないか。
       四 耐震的考慮の動機
 一|屋《をく》一|代《たい》主義《しゆぎ》の慣習《くわんしふ》を最《もつと》も雄辯《ゆうべん》に説明《せつめい》するものゝ一は即《すなは》ち歴代《れきだい》遷都《せんと》の史實《しじつ》である。
 誰《たれ》でも、國史《こくし》を繙《ひもと》く人《ひと》は、必《かなら》ず歴代《れきだい》の天皇《てんのう》がその都《みやこ》を遷《せん》したまへることを見《み》るであらう。それは神武天皇即位《じんむてんのうそくゐ》から、持統天皇《ぢとうてんのう》八|年《ねん》まで四十二|代《だい》、千三百五十三|年間《ねんかん》繼續《けいぞく》した。
 この遷都《せんと》は、しかし、今日《こんにち》吾人《ごじん》の考《かんが》へるやうな手重《ておも》なものでなく、一|屋《をく》一|代《だい》の慣習《くわんしふ》によつて、轉轉《てん/\》近所《きんじよ》へお引越《ひきこし》になつ
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