が買へる、牛が子を生む、さうすれば自分が立派な牛乳屋の主人となることが出來る、實に愉快であると市塲へ行く間に考へた、其のおしまひの牛乳屋の主人となる考へを起した時は最早現在出世したやうな心持で嬉しくて/\雀躍した、所が頭の壺はコロリと落ちて甕は破れ牛乳は流れ去つて迹方も無くなつてしまつたと云ふ話がある、ツマリ空想に耽けるの馬鹿氣たことを書いたのであらうが、是がパンチヤタントラの本に出てあるのである、是に依るとバラモンの坊樣が托鉢して鐵鉢の内に米を貰つて來、其れを寢床の隅に懸けて寢た、而して夢に色々の事を考へた、ドウか今年は饑饉でありたいものだ、饑饉年であれば米が高くなる、そこで此の鐵鉢の米を賣ると非常な利益を得る、其の儲けた金で自分は奇麗な家を拵へ、而して奇麗な女を貰つて自分の細君にしやう、まだ其の妻君には澤山持參金を附けて貰はなければならぬ、夢では何事も意の儘に出來る、彼は忽ち是を實現した、而して細君を娶つてモー子供が出來た、或日子供が自身の傍で遊んで居つた、細君に子供を其方へ連れて行けと云ふたが、細君は自分の言ふことに從はぬ、彼は怒つて足を擧げて蹴倒さんとした、其の時夢中に彼は自分
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