、併し印度の物語を手本として書いたものである、而して其の教訓變遷の工合が又中々面白い、一番初めは佛教徒の集めて置いたものであるから佛教主義の教訓書であつた、が次にはバラモンの手に移りバラモン教的のものとなり、波斯、バクダットを經、君士坦丁堡に入り、夫から歐羅巴に這入り耶蘇教的のものともなつた、尚其の旅行の途中には物語の消滅してしまつたものもあれば、段々變形して顯はれ來つたものもある、長い道中のことであるから自然所に應じて形が變つたり、又無くなつたものである、佛のラフオンテーンの話も畢竟は皆カリラグから出たもので其の元は五卷書である、最後に其の話の變化の仕方を一寸述べて見やう、ラフオンテーンの物語の七卷の十に牛乳搾の女の話がある、其の話の大體は次のやうなことである、或時牛乳搾の女が牛乳を搾つて其の搾取つた甕をば頭へ載せて市塲へ賣りに行つた、が未だ年若い女であるから途中色々の空想を懷いた、今頭に載せて居る牛乳を市塲で賣れば是だけの利益がある、其の利益で鷄卵を買うて而して雛を拵へる、夫を賣ると是だけの利益になる、利益が段々大きくなるから今度はそれで豚を買ふ、夫を大きくして又之を賣ると大丈夫牛
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