の足を擧げて鐵鉢を蹴放したからたまらぬ、米は四邊に散らばつて最早や拾ふことも出來なくなつたと云ふ、これが其の話の大要である、前の牛乳女の話と唯其の肉を異にするのみで骨は全然同じである、斯う云ふ工合に段々と變つて往つたのである、尤も一例を擧げるとパンチヤダントラと云ふ五卷の書物に山犬の話がある、或る貪慾な山犬が一日山を驅けて居る時に、偶と獵人が死んで居るのを見附けた、而して獵人の傍には弓もある、山犬は宜い獲物があると考へ直に獵人を食はうとしたが、併し獵人は旨さうだから後の樂として、先づアノ弓から食つてやらうと斯う考へて其弓弦を食始めた、すると弓弦がパツと切れた、切れた拍子に弓が山犬の眉間に當つて山犬は死んでしまつた、と斯ういふ話がある、所がラフオンテーンにも是れと殆ど同じことが書いてある、が唯山犬は狼となり、弓に觸れた時矢が當つて死んだと變つて居るのみである、然う云ふやうに地方々々に適するやうに次第に變つて來たものである、是等が即ち文學上の物語の話で、近世歐羅巴に於て最も多く人の愛讀する物語の多くは印度の材料からして變化し來つたものであることを證據立てる、又佛の傳記は印度に於ては中々勢力
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