も腹の中に物があると工合が惡いと見えて、今日入定するといふ日になると一寸より少し廣い位な布の片で、長さは三丈ばかりもある所の細長いものを口からして飮み込む、素人には中々出來さうもないが、練習をすると容易に出來るやうになる、而して彼の布片を一度飮み込んでしまふと又た次第に片端から引上げて來る、是れはツマリ胃の中を掃除して穢い物や何かを取去る爲である、それからして又大きい風呂桶の樣な桶に自分の肩位迄浸るやうに水を灌ぎ、而して細い管を肛門に挿込んで、それから水を容れて吾々の灌膓すると同樣に、穢物を出して膓の掃除をする、夫れが終ると今度は綿に油のやうなものを浸して鼻の孔や耳の孔等を塞いでしまふ、而して地面へは大風呂敷のやうな布を敷いて、其上に所謂結跏趺坐するのであります、それから前に言つた舌を捲き上げ定に入るのである、其の定に入つた人のことを書いたものを讀みますると次のやうなことがある、ズツと坐り込むと初めには先づ何だか身體の内方々に音聲が聞える、是は或は血管中の血の循環と云ふやうなものかも知れぬが、心臟の邊から首の邊、夫れからして眼の中程の處にまで音がする、而して其音が段々色々に變つて來る、
前へ 次へ
全25ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
松本 文三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング