初は皷のやうな音がするが、次には海の浪のやうな音、夫れからして雷の響、鐘の聲、貝を吹くやうな音、笛のやうな音となり、終には蜂の鳴くやうな音が聞えると云ひます、夫れから眠るが如く定に入つてしまふのであります、而して此等の事は澤山の人間の見物の眞中でやるのである、愈定に入つて殆ど死人のやうに成つてしまふと、傍の者が下に敷いてある大風呂敷のやうなもので其體を包んで、之を棺桶の中へ入れ地面の下へ埋める、或は又其の儘にして打遣つて置いても宜い、一週間も斯う云ふことをやつて居るのは印度人には決して珍らしくない、がハリダースは四十日間も地中に在つて、何ともないと云ふのであるから、世人からは非常な尊敬を受けたのである、ハリダース自身の話に據れば、彼れは一年間やつても善いと云うて居る、一年間は試みた事はないが四十日間位は確にやつたのであります、一番初めて其の試驗をやりましたのが、西暦千八百二十八年でありまして、ハリダースを知つて居る印度の土人が或地方の裁判所の役人となつて居つた、其の人が非常にハリダースを信仰して居るので、何うか彼の不思議な働きを其地方の兵營の中で試驗して貰ひたいと軍司令官の處へ申出まし
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