は少しもない、皆手細工で、小さい小屋に在つて手で以て遣つて居る、祖先傳來の技術である、祖先傳來で職を嗣いで居る技術と云ふものは、總て新しい意匠とか新奇な工夫をするといふことはない、併ながら昔から傳へて居る職を其儘に受繼いでやつて居るだけに、中々宜いものを作り出すことが出來る、然う云ふやうな譯で印度人は總ての方面に於て非常に昔を貴ぶ慣習が盛なのであります、茲に御話します印度の聖人と云ふことも唯それが宗教的方面に顯はれ出たに過ぎないのであります。
宗教的方面に於て印度人は昔から一種の不思議なる行をやる、而して其の行によつて一種不思議なる働を爲す、斯の如き行を爲し、又其不思議な働きを爲すものをば印度人は聖人と名づけ、非常に尊重して居るのであります、其の行と申しまするのは、日本では隨分昔から言傳もありますから、聞いただけでは左程珍らしいとも思はれませぬが、定即ち禪定に入ると云ふことであります、印度では何れの宗派に屬するものでも入定と云ふことは非常に大切な事と成つて居る、我が肉體が其の儘に神となり、若しくは神以上のものもとなり[#「ものもとなり」はママ]、神祕不可思議なる力を得ることが出來るとい
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