やうな種類のもの僅ばかりを有するのみである、夜具も着換への着物も何にもいらぬ、唯風呂敷のやうなもの一枚あれば宜し、誠に單簡なもので、何處へ行くにも夫れだけさへ持つて行けば差支ないのである、衣食住の單簡なことは實に驚くばかりである、西洋人が這入りましてからは鐵道も四通八達し、學校も色々な程度のものが到る處に設けられた、然るに土人は殆んど此等文明の利器を利用しない、彼等は皆一種の宗教心を持つて居つて、旅をするにも容易に乘物には乘らぬ、跣足で以て如何なる處へでも自分の身代の鍋釜を携へて歩いて往く、又子供を學校へ出すなんぞと云ふこともしない、外人は印度人の最も輕蔑する所で、日本で言へば穢多同樣に見做して居る、然う云ふものの教育する所が彼等に喜ばれなく却て擯斥せらるヽに至るのは寧ろ當然である、誠に文明の餘澤は未だ印度の國に行渡つて居らないのであります、昔は色々な技術も進歩し、宗教、文學も盛に研究されたものであつたが、今も彼等は依然として其の形骸を守り、少しも他のものを入れやうとはしない、で今でも印度では織物であるとか、金物細工であるとか立派なものが出來る、併し器械を用ひて製造すると云ふやうなこと
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