エラーと云ふ人は、印度は實に世界の寳庫であつて、如何なる學問を研究するものも、此に新しい材料を發見する、西洋では判らない不思議な事實が印度には多々存在すると云うて居る、殊に印度と云ふ國は昔は開けた國でありまして、今は亡國の民とも云ふべき、如何にも憐れな國と成つて居りますが、古代に於ては文學に於ても技術に於ても宗教に於ても哲學に於ても中々豪い者を輩出した處である、而して英領に成つてからは大きな都は悉く西洋に化し、例へば孟買であるとか、マドラスであるとか、又はカルカツタであるとか、大きな開港塲は先づ西洋と大體違はない位である、が一歩踏込んで内地に這入つて行きますとマルで樣子が變つて仕舞ふ、印度は元來非常に保守的の國である、支那よりもモー一層保守的の樣に考へらる、で少しばかり田舍へ這入りますと殆ど太古の状態其儘で、我々も二千年以前は斯の如くであつたらうと想像される位である、土人は木か竹に泥を塗り上げ、丁度日本の土藏造りのやうで粗末なもの、或は小屋掛と云ふやうな種類の土間の小さな建物の中に這入つて、牛や羊と雜居して居る極めて簡單な生活である、家具などは無い、唯毎日必要な鍋、釜、小さな茶碗と云ふ
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