して居る、斯の如く此入定の奇蹟は極古い時からあるのであるが、但し中には又山師的な者もある、印度では前にも述べた通り斯る行者は非常に尊敬され供養を受くるのであるから、多くの中には山師的に世人を欺き、財貨を得んと欲する者も居るのであるから、決して之を以て眞正の行者と混同してはならぬ、千八百九十六年歐羅巴ハンガリーの都ブタペストと云ふ所に萬國博覽會が開かれました、此時二人の印度人がやつて來て、前に述べた樣な行をやつて觀覽に供すると云ふことを言ひ觸らし、彼等は二週間定に入り其の間飮まず食はぬと揚言した、而して大きな硝子函を作つて二人の印度人は其中に這入込み、何處からでも見えるやうにして實驗をやらした、彼等は果して如何にも殊勝に坐つて少しも動かず物も食はない、之を觀るものは誠に不思議なことであると感じて大評判となつた、爲にブタペスト大學や、維納大學の教授の醫學者或は心理學者が實驗をしたが、只不思議なことであるといふのみで少しも要領を得なかつた、所が是は山師的の見世物であつて、硝子函の葢が内から取外しの出來るやうに作られてあつて、彼等は夜中人の靜まつて後竊に其の葢を押開けて外へ出で、菓子だの牛乳だ
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