どこそ、くたくたになりこんなことでつゞくかしらと、吾ながらあやぶみ、かなしくなりましたけれど、唇をかみしめてこらへてをりますうち、体も馴れ、ようりようも覚え、この頃ではさほど苦しいとも思はず、いまではどうやら二頭曳のプラオのハンドルを持てるところまでこぎつけました。ほんとにはじめのうちは、夜になると、からだぢうすきまもなしに骨までたゝかれたやうで、とても明日の朝は起きあがれまいとあやぶみました。もちろん朝になつてはいつそう苦しいのでしたけれど、モンペをはき、きやはんをつけると気が張り、またどうやらその日一日がつゞけられるのでございました。
このやうな生活に耐えられたのも、常日頃のお母さまのお心遣ひのおかげと、しみじみありがたく思つてをります。
ことに五つのときから十三の春まで、矢倉沢の山に里子に出しておいて下すつたおかげで丈夫になれたのでございます。ちよはかあいさうに、お父さまが亡くなるとすぐ里子に出されて、やつぱりなさぬ仲だから――なぞと、口さがないひとびとの言葉を真にうけて、お母さまをお恨みした日もありましたこと、いまさらもうしわけなく存じます。
胸を患らつて亡くなつた生母の
前へ
次へ
全21ページ中16ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
辻村 もと子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング