そのまゝにかたよつてちよつと漢詩みたいなのでございますの、こんどご披露いたしませうね。ではけふはこれだけ、おからだくれぐれもご大切にあそばして下さいませ。
   四月十八日[#地から1字上げ]ちよ
  母上さま

 たいそう忙しい毎日なのでゆつくりお手紙さしあげるひまもなく、気にかゝりながらごぶさたしました。お兄さまお具合お悪い由、こまりました。せつかくの学業も中途でお止しにならねばならぬこと、私も残念でたまりません。でも、こゝ一二年のご静養でよくおなりあそばせば、今度こそ思ひきつて、支那にでも南洋にでもいらつしやるのですから、いまのうちあせらずすつかりおなほしになつていたゞきたうございます。
 もうあと一年といふところで、ほんとに惜しうはございますが、もう相当に支那についてのご勉強もおできになつていらつしやるのですもの、あとはなによりお体が大切、丈夫な体でなければ、なにひとつ初心を貫くこと出来ぬものと、しみじみこの頃は考へてをります。私もおかげさまで丈夫なのがなによりのとり得。小柄で弱々しげに見えるくせに、案外働けると、夫はじめ皆さまに驚かれてをります。なれぬ百姓仕事は、初めの半月ほ
前へ 次へ
全21ページ中15ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
辻村 もと子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング