かしくゆかぬらしく、いろいろと厄介なことになつてをります。もつとも、あまり地味のよくないところで、浩造さまも、せめてこの土地ぐらゐの土質なら、いくら北でも開墾し甲斐があるのだが、とてもゆくゆく水田にはなりそうもないので――とあまり気乗りなさらぬごやうすなのでございます。おまきさまもやはり、こゝからお離れになりたくないらしく、赤ちやんがお出来になつたばかりなのに、新しい未開地にお入りなされるのはお苦しいに違ひないことで、出来れば私が代りたいくらいでごさいます。千鶴ちやんは浩造さまによく似たまる顔の丈夫さうな赤ちやんで、もう小浪におんぶされにこにこ笑ひ、家中の人気をひとりでさらつてしまひました。
 けふはこれから農場の南のはづれの雲雀耕地にプラオを入れるのだともうしてをりますので私もいつしよに出かけます。この雲雀耕地といふのは夫がつけた名なのださうでございます。この村の志文ともうすのも夫が名づけ親とのこと、あなたは土に志しなすつたのに――とももうしましたら、いや俺達の子供に、ひとりぐらゐは文に志すものができるかもしれないと笑ひました。でもあのひとも和歌を作りますのでございますよ。それが性質
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