、お母さま。北海道の土は黒くて、やはらかで、生きてゐるみたいなのでございますよ。裏の原始林の大きな楡の木のまはりから第一ばんに雪が消えはじめました。さういたしますと、すぐその下から去年の落葉におほはれ、しつとりと水気を含んだ土があらはれ、その土にはもう春の若草の芽が、生き生きと頭を出してゐるではございませんか。無邪気に、しかも大胆に生きてゐることを主張してゐるみたいで笑ひだしたくなるやうなのでございます。
おまきさまの赤ちやん――千鶴ちやん――によいお祝ひ着ありがたう存じました。それはそれはよろこんでゐました。私も肩身のひろいおもひで、お母さまのお心づくし身にしみてありがたく思ひました。
それから、私からとして坪井の叔母さまにいたゞいてあつた友禅でおちやんちやんを縫つてさしあげましたのは、いろいろおまきさまにお世話になつてをりますためで決して決して実家からいたゞいた分が足りなかつたといふわけではないのでございます。ご相談もうしあげますにも日がかゝりますので勝手にさしあげてしまつて、お気をお悪くあそばしたのでしたら、どうぞおゆるし下さいませ。
浩造さま方の貸下地のこと、あまりはかば
前へ
次へ
全21ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
辻村 もと子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング