ときにともうし、それまで私の名儀で銀行にあづけてくれました。この開墾小屋に、新しい桐の箪笥なぞふさはしくないやうな気がいたし、もつと暮しがとゝのつてからでもいゝやうにおもはれますけれど、おほせのとほり買ふとき買つておかないと、せつかくのお母さまのご丹誠が知れなくなつてももうしわけないことですから、そのうち折をみて必ずとゝのへます。
二月はいちばん寒い時ださうですけれど、そんなに辛くもなく、もうあと一月もすればそろそろ雪どけになりますさうで、どんな土がこの雪の下にかくされてゐるのかと、楽しいことでございます。
自分の勝手なことばかり書きましたが、お母さまのお体いかゞでいらつしやいませう。このあひだからもうし上げようと存じて書き忘れましたが、掘抜きの井戸端が苔で大分滑りますから、どうぞお気をつけなすつて下さいませ。
春江がよく働いてくれるとよいと念じてをります。あのひとも、今度は私がゐないのですからほん気になつてお母さまのお手伝ひ出来るだらうとはおもひますが。
では、坪井の叔母さまによろしく。
二月二十五日[#地から1字上げ]ちよ
お母様
土がでてまいりましたのですよ
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