ら帰つてまいりましたばかりでお母さまのお気持分らず、ほんとにまゝ子根性といふのだつたのでございますね。
浩造さまご夫婦は春早々に、こゝよりはもつと北の十勝ともうすところの、只今貸下申請中の開墾地にお入りになるのださうで、辛抱してやつと住みよくしたとおもふと、また新しい開墾地に入らなければならないなんて、ひどく馬鹿げたことだと、おまきさまは冗談のやうにおつしやいましたけれど、ほんとにさうにちがひなく、私が追ひだすやうで済まない気がいたします。浩造さまも夫の手伝ひして十年も開墾のお仕事なすつたのですもの、このまゝ、この百町歩の農場の半分なり三分の一なりお分けしてあげられたらと思ふのですけれど、夫には夫の考へがあるらしく、浩造はまだ若いのだし、開墾の仕事には馴れてゐるのだから、もうひと働きしてお国のために土地を開かなければならん。北海道はまだまだ奥がひろいのだ。そして、今度は立派に独力でやつてみなければ、ほんとの北海道開拓者にはなれないのだ。と笑つてとりあげません。たゞ私ひとり済まないやうな気持でございます。
お母さまのお手紙にございました箪笥はまだ買ひません。春にでもなつて札幌に行つた
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