ので、まず白い鳥打帽に太い金剛杖、近よって見るほどの鼻ひげ、登山袋の中を察するに、きのう買った氷砂糖一斤、小さい詩集二、三冊、その他合計四貫という重さ……まったく得意そのものだ。
 つぎに原田御大将一男殿ときている。ヘルメットに包んだあの肥大な体、金剛杖……。
 それに続くは自称山男伊淵太一郎、ひらきに美しく装うた山男は、その山男たるを忘れられては、と心配してか一枚の茣蓙を負っている。まあ顔ぶれは長くなるから止そう。
「処女会の人びとがですか……われわれのために……世話をしてくださるんですって……」
 東沢の小学校に一休み。

     三

 校長先生の説明にうなずいて感心している者もある。話によれば、新山分校のわれらの仮旅舎では処女会などが総動員でわれらを歓待してくれる由。旅のさびしさもうるおいある歓待になぐさむことだろう。

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旅なれば人の心のしみじみと
 なつかしみけり休らへるとき

雲行きを見つつ歩める我が心
 明日の旅路を想ひまどへる

一杯の茶にもしみじみ我が心
 なつかしみけり旅にしあれば

汗ばみし肌ふく風の寒ければ
 峠近きを知りて歩めり


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