悩みつづけた、荒っぽい野性のまんまの教え子たちには、鉛筆の走り書きで、「よい子になるように……」と遺書をのこし、学校と村人たちに対しては、自分のいたらなさをわびる書をのこして……。子どものけんかをめぐるしつけに苦しみ、無知で封建的な父兄たちに無言の抗議をのこして。

 わたくしは、この出来事のあと、わかい女教師たちとこの問題について語ることができた。わかい女教師たちは口をそろえてK子の問題は、そっくり自分たちの苦しみであり悩みであると告白した。子どもへの愛情をもちながら、その愛情をしつけのうえでどうもちつづけ、表現していけばいいのか。民主的な角度から、あたたかくしつけようとすればするほど、荒っぽい子どもの野性との対立がはげしくなってくる悩み。子ども同士のけんかもぬすみも、みな教師の無責任として追及してくる父兄たちの古い観念とのつきあたり。それに対してわたくしたちは――しつけそのものに対する古い訓練意識、教師意識をすてさせること、教室も職員室も村の家庭も一つ意識の民主的な生活をつくりあげねばならぬこと、新しいヒューマニズムにつらぬかれた人間とその生活をつくりあげていくために、広くまっすぐ
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